静電気対策の規格
〜電子分野向け〜
静電気の管理には、 国際規格の「IEC」と、国内規格の「JIS」「RCJS」があります。
JISは、IECを基に日本語化したもので、国内での基準として広く利用されています。一方、RCJSはJISにできない部分を日本の現場に合わせて規格化したもので、たとえば机まわりのアイテムやイオナイザーの試験方法 など、JISに含まれない要求事項が定められています。
こうした規格を理解し、現場の管理基準や社内ルールづくりに役立てることが大切です。
規格一覧(IEC/JIS/RCJS)
| IEC 61340-1 | 静電気放電現象の基礎 | JIS規格 | RCJS規格 |
|---|---|---|---|
| IEC/TR 61340-1 | 静電気現象の原理と計測方法について規定 |
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| IEC/TR 61340-1 | 静電気およびESD制御測定における誤差の考慮と不確かさの推定に関する指針、測定結果を試験報告書にどのように記載するかについても概説。 |
|---|
| IEC 61340-2 | 材料や製品の静電気性能の測定方法 | JIS規格 | RCJS規格 |
|---|---|---|---|
| IEC 61340-2-1 | 材料及び製品の静電気電荷拡散性能の測定方法 | JIS C 61340-2-1 | |
| IEC/TR 61340-2-2 | 帯電特性の測定 | JIS C 61340-2-2 | |
| IEC 61340-2-3 | 静電気電荷蓄積を防止する固体平面材料の抵抗 及び抵抗率試験方法 |
JIS C 2170 | RCJS-5-1附属書J |
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| IEC 61340-2-1 | 絶縁性及び静電気拡散性の材料及び静電気電荷の拡散性能の測定方法について規定、具体的な適用に関する試験手順の詳細について規定。 |
|---|---|
| IEC/TR 61340-2-2 | 物体と他の物体との間の接触、剝離、摩擦などによって発生する静電気電荷を評価するための静電気の帯電特性の測定方法について規定。この規格で取り扱う静電気の発生過程は、エレクトロニクス産業に限定したものであり、測定対象についてもエレクトロニクス産業で一般的に用いるものに限定。この測定方法は、着火及び爆発の可能性がある環境には適用しない。 |
| IEC 61340-2-3 | 静電気電荷蓄積を防止するための104〜1012Ωの範囲の固体平面材料の電気的抵抗及び抵抗率の試験方法について規定。 |
| IEC 61340-3 | 静電気の影響をシミュレーションする方法 | JIS規格 | RCJS規格 |
|---|---|---|---|
| IEC 61340-3-1 | 人体モデル (HBM) の静電気放電試験波形 | JIS C 61340-3-1 | |
| IEC 61340-3-2 | マシンモデル(MM)の静電気放電試験波形 | JIS C 61340-3-2 |
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| IEC 61340-3-1 | 人体モデル(HBM)に対する静電気放電(ESD)を再現するのに用いる放電電流波形及びその波形を作り出し確認するために用いる装置への基本的な要求事項について規定 |
|---|---|
| IEC 61340-3-2 | マシンモデル(MM)において静電気放電(ESD)を再現するために用いる放電電流波形及びその波形を作り出し確認するために用いる装置の基本的な要求事項について規定 |
| IEC 61340-4 | 特定応用のための標準的試験方法 | JIS規格 | RCJS規格 |
|---|---|---|---|
| IEC 61340-4-1 | 床仕上げ材及び施工床の電気抵抗 | JIS C 61340-4-1 | |
| IEC TS 61340-4-2 | 衣服の静電気特性を評価するための試験方法 | ||
| IEC 61340-4-3 | 履物 | JIS C 61340-4-3 | |
| IEC 61340-4-4 | フレキシブルコンテナの静電気的分類 | JIS C 61340-4-4 | |
| IEC 61340-4-5 | 人体と組み合わせた履物及び床システムの 静電気防止性能の評価方法 |
JIS C 61340-4-5 | |
| IEC 61340-4-6 | リストストラップ | JIS C 61340-4-6 | RCJS-5-1附属書A2 |
| IEC 61340-4-7 | イオナイザ | JIS C 61340-4-7 | RCJS-5-1附属書A4 |
| IEC 61340-4-8 | 放電遮蔽−バッグ | JIS C 61340-4-8 | RCJS-5-1附属書A5 |
| IEC 61340-4-9 | 衣服 | JIS C 61340-4-9 | RCJS-5-1附属書A1 |
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| IEC 61340-4-1 | 静電気対策に使用するすべての種類の床仕上げ材及び施工床の電気抵抗の求め方について規定(1.0×104Ω以上で1.0×1013Ω未満の接地間抵抗、点間抵抗及び垂直抵抗)。 |
|---|---|
| IEC 61340-4-2 | 衣服および衣服を構成する材料の静電気の帯電および放電特性、電界抑制特性、および電荷散逸特性を評価するために使用できる試験方法および手順について規定。 |
| IEC 61340-4-3 | 人体の静電気電位を制御するために用いる履物の電気抵抗の測定方法について規定。 |
| IEC 61340-4-4 | 危険な爆発性雰囲気での使用を意図し、0.25 m3〜3 m3の容積をもつフレキシブルコンテナに対する要求事項について規定。 |
| IEC 61340-4-5 | 人体と組み合わせた履物及び床システム(帯電防止性能をもつ履物を履いた人体から床までの系)の静電気防止性能を評価するための試験方法について規定。 |
| IEC 61340-4-6 | リストストラップの評価試験、受入試験及び都度試験のための電気的及び機械的な試験方法及び限度値について規定。 |
| IEC 61340-4-7 | 静電気対策の一環として、電荷中和のために使用するイオナイザを評価及び選定するときの試験方法及び手順について規定。 |
| IEC 61340-4-8 | 静電気放電シールドバッグの性能を評価するための試験方法について規定(試験装置の設計電圧は、直流1000 V)。 |
| IEC 61340-4-9 | 静電気管理応用に用いる衣服の電気抵抗を測定するための試験方法について規定。 |
| IEC 61340-5 | 電子デバイスを静電気放電(ESD)から保護するための規格 | JIS規格 | RCJS規格 |
|---|---|---|---|
| IEC 61340-5-1 | 静電気現象からの電子デバイスの保護-一般要求事項 | RCJS-5-1 | |
| IEC TR 61340-5-2 | 静電気現象からの電子デバイスの保護-指針 | RCJS-TR-5-2 | |
| IEC IS 61340-5-3 | 静電気敏感性デバイスのために使用する包装の特性と要求事項 | RCJS-5-1附属書I |
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| IEC 61340-5-1 | 100V人体モデル(HBM)および200V充電デバイスモデル(CDM)および絶縁導体の場合は35V以上の耐電圧を持つ電気・電子部品、アセンブリ、機器の製造、加工、組立、設置、包装、ラベル付け、サービス、試験、検査、輸送、その他の取り扱いを行う活動に適用。 |
|---|---|
| IEC TR 61340-5-2 | 100V人体モデル(HBM)および200V充電デバイスモデル(CDM)および絶縁導体の場合は35V以上の耐電圧を持つ電気・電子部品、アセンブリ、機器の製造、加工、組立、設置、包装、ラベル付け、サービス、試験、検査、輸送、その他の取り扱いを行う活動に適用。 |
| IEC IS 61340-5-3 | 製造、再加工および保守、輸送および保管の全段階を通じてESD感受性デバイスを保護するために必要なESD保護包装特性を定義。これらの製品および材料特性について、包装および包装材料を評価するための試験方法、性能限界値。 |
規格の種類
- IEC規格:国際電気標準会議が策定する電気・電子技術分野の国際標準規格
参照)https://webstore.iec.ch/ - JIS規格:日本の産業製品やサービスに関する品質や安全性の基準を定めた国家規格
参照)https://www.jisc.go.jp/jis-act/ - RCJS規格: (一財)日本電子部品信頼性センター(RCJ)が制定した、静電気現象から電子デバイスを保護するための国内規格
参照)https://rcj.or.jp/standard-rcjs
RCJS規格(一般財団法人日本電子部品信頼性センター)
| RCJS | 一般財団法人に日本電子部品信頼性センターのRCJS規格 | IEC規格 |
|---|---|---|
| RCJC-5-1 | 静電気現象からの電子デバイスの保護 - 一般要求事項 | IEC 61340-5-1 |
| 1 適用範囲 | ||
| 2 引用規格 | ||
| 3 用語及び定義 | ||
| J4ESDコーディネータ | ||
| 4標識・マーキング | ||
| 5ESD保護区域(EPA) | ||
| 6保護包装 | ||
| 7購入・受入・保管・取扱い | ||
| 8訓練 | ||
| 9品質責任 | ||
| 10定期監査の手引き | ||
| 附属書 A 試験方法 | ||
| A1 衣類の試験のための抵抗測定方法 | IEC 61340-4-9 | |
| A2 リストストラップ試験のための測定方法 | IEC 61340-4-6 | |
| A3 履物、手袋、指サック、工具の試験のための測定方法 | ||
| A4 イオナイザの試験方法および装置 | IEC 61340-4-7 | |
| A5 静電気放電遮断材料の性能評価のための試験法ー袋 | IEC 61340-4-8 | |
| 附属書 B(参考)工具の電荷減衰測定方法 | ||
| 附属書 JB(参考)電荷減衰測定方法 | ||
| 附属書 C(参考)ESDの影響を最小限にするための設計上の考慮 | ||
| 附属書 JC(参考) | ||
| 附属書 JC.A ESD包装材料の指針 | ||
| 附属書 JC.B デバイス損傷 | ||
| 附属書 JD(参考)ESD管理マニュアル作成及び監査の指針 | ||
| 附属書 JE(参考)ESDコーディネータの推奨される職務 | ||
| 附属書 JF(参考)RCJSと対応国際規格との対比表 | ||
| 附属書 I(参考)包装に関する要求事項 | IEC IS 61340-5-3 | |
| 附属書 J(参考)静電気電荷蓄積を防止する固体材料の抵抗 及び抵抗率試験方法 |
IEC 61340-2-3 | |
| RCJS-TR-5-2 | 静電気現象からの電子デバイスの保護-指針 | IEC TR 61340-5-2 |
| 1 適用範囲 | ||
| 2 引用規格 | ||
| 3 用語及び定義 | ||
| 4 人体安全 | ||
| 5. ESD 管理プログラム | ||
| 附属書 A(参考)RCJS-5-1 に基づく ESD 管理プログラム計画書の例 | ||
| 附属書 B(参考)ESD 管理用アイテムの考察 | ||
| 附属書 JC(参考)RCJS-TR-5-2 と対応国際規格との対比表 |
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ESD保護アイテムに対する要求事項(RCJS-5-1:2016)
| アイテム個別の 要求事項 |
端子間抵抗 Re または 点間抵抗 Rp(Ω) |
EPAグラウンド抵抗、 またはグラウンド可能 接続点への抵抗 Rg(Ω) |
電荷減衰 ※4 |
|---|---|---|---|
| 作業表面、保管棚、 トロリー及びカート |
1×104≦Rp≦1×1010 ※5 | 7.5×105≦Rg≦1×109 ※5 |
|
| 床 | ≦Rg<1×109最小値 ※1 ※2 | ||
| 椅子 | Rg≦1×1010 | ||
| 衣類 | 1×105≦Rp<1×1011 | ||
| 手袋、指サック | ※6 | ※6 | |
| 着用していない リストバンド |
Rp≦1×105 | ||
| リストストラップ | 7.5×105≦Re≦5×106 ※3 | ||
| グラウンドコード | |||
| 履物 | Rg<1×108 最小値 ※7 | ||
| 工具 | Rg<1×1012 ※1 | ||
| イオナイザ | 1,000Vから100Vまでの 減衰時間が最大20秒 |
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| システム要求事項 | 端子間抵抗 Re または 点間抵抗 Rp(Ω) |
EPAグラウンド抵抗、 またはグラウンド可能 接続点への抵抗 Rg(Ω) |
電荷減衰 ※4 |
|---|---|---|---|
| 着用したリストストラップ (リストストラップシステム) |
7.5×105≦Rg<3.5×107 | ||
| 着用した手袋と指サック | 7.5×105≦Rg<1×1012 | 初期値(Max 1,000V)から 初期値の10%まで2秒未満 |
|
| 金属プレート上で着用した靴 | 1×105/(片足)≦Rg<1×108 ※2 | ||
| 人体/敷物システム | Rg<1×1089Ω (2)
及び 人体電位<100V (5個の最高点の平均) |
||
| 工具システム | 初期値(Max 1,000V)から 初期値の10%まで2秒未満 |
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- ESDSを保護するための最小抵抗値というのはない。しかし安全性確保のために、最小抵抗値が必要な場合がある。関連の国内基準、IEC 61010-1、IEC 60479、IEC 60536、IEC 60364を参照。
- 人体接地の基本的な方法として履物 / 床システムを使用する場合の下限抵抗値は、人体安全性を考慮してESDコーディネータが決定する。(RCJS-5-1 5.5項 及び IEC 61340-4-5 を参照)
- 最大のEPAグラウンド抵抗値は、250V ac、または500V dc 当たり最小7.5×10⁵Ωの抵抗を確保するために増加することがある(通常1×10⁶Ω)。
抵抗は、250V(ac)、または500V(dc)当たり1/4Wの最小電力定格をもつようにする。 - 表面抵抗、点間抵抗、グラウンド可能点への抵抗が1×10¹⁰Ωを超える場合、または材料が均質でないもの、または絶縁性部位を持つ構造の場合は必須となる。
- ESDコーディネータが承認した場合には、規定された下限抵抗値以下の抵抗は許容される。
- システム要求事項の着用した手袋と指サックを参照。
- 人体 / 履物システムの要求事項を参照。
ESD保護アイテムチェックリスト(RCJS-5-1:2016)
| 点検頻度 | アイテム | 検査方法 | 注意点 | |
|---|---|---|---|---|
| 1.毎日 | a. 接地点の接続部の点検 | 目視検査 | 稼働部の接続 | |
| b. 衣服類 | 目視検査 | タグやマーキングなどの識別 | ||
| c. トロリー | キャスタ | 目視検査 | 絶縁体の付着 | |
| ドラッグチェーン | 目視検査 | 汚れ、錆の発生、不純物の付着、 シャーシ部分との接続 |
||
| d. イオナイザ | 目視検査 | 位置と方向 | ||
| e. 領域に必要な絶縁物 | 目視検査 | 静電気の発生に注意 | ||
| f. リストストラップ | 5.2.7 | ※1 | ||
| g. 非恒久的履物 | 5.2.8 | ※1 | ||
| h. 恒久的履物 | 5.2.8 | |||
| 2.毎月 | a. 接地接続 | 作業表面、EPB、床、椅子、 トロリー、現場作業用具、 マット、作業場、ラック |
電気的接続性の 点検を抜取り検査 |
|
| b. イオン化装置システム | ||||
| 3.半年 | a. VDU、機器、配線、 その他の高電圧配線の近くの領域 |
抜取り検査 | ||
| b. 静電界 | 5.3.5 | |||
| c. 標識とラベル | 4. | 移動や汚れ、破損、標識の 不正書き込み |
||
| d. 非使い捨て衣類 | 5.2.5 | ※2 | ||
| e. 恒久的な履物 | 5.2.8 | 着用した状態で | ||
| f. 使い捨て衣類 | 抜取り検査 | 受入れ検査 | ||
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- 少なくとも作業日ごと、通常の着用状態で点検することが推奨されます。さらに、その機能性点検は、シフトの開始時の、製品を取扱う前に行います。
乾燥膚の作業者が、リストストラップや履物を使用する場合には、着用部分の下の皮膚が十分に汗ばみ、導通性がでて、リストストラップ/履物テスタで“合格”になるまでに時間を要します。 - ある種の衣類は、帯電防止剤など化学薬品により静電気拡散性と帯電防止性を補強しているものがあります。
このような衣類を使用している場合は、洗濯中に帯電防止特性の劣化が急激に現れることがあるので、半年ごとの検査により頻繁に点検を行うべきです。
試験方法(RCJS-5-1:2016)
| 要求アイテム ※1 | 端子間抵抗 Re または 点間抵抗 Rp |
EPAグラウンド抵抗、 またはグラウンド可能 接続点への抵抗 Rg |
電荷減衰(秒) | シールド 効果 |
電荷発生 ※2 |
|---|---|---|---|---|---|
| 作業表面、保管棚、 トロリー及びカート |
JIS C2170 (8.6.4) | JIS C2170 (8.6.3) | |||
| 床 | JIS C31640-4-1 (9.4) | ||||
| 椅子 | JIS C2170 (8.6.3) | ||||
| 衣類 | 附属書A.1 | ||||
| 手袋、指サック | 附属書A.3 | ||||
| リストバンド | 附属書A.2 | ||||
| リストバンドコード | 附属書A.2 | ||||
| 履物 | JIS C31640-4-3 | ||||
| 工具 | 附属書A.3 必要な場合 |
附属書A.3 | JIS C31640-2-1 (A.3) | ||
| イオナイザ | 附属書A.4 | ||||
| 包装 | JIS C2170 (8.6.1) | 附属書JB | 附属書A.5 |
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| システム要求事項 | 端子間抵抗 Re または 点間抵抗 Rp |
EPAグラウンド抵抗、 またはグラウンド可能 接続点への抵抗 Rg |
電荷減衰(秒) | シールド 効果 |
電荷発生 ※2 |
|---|---|---|---|---|---|
| リストストラップ システム |
附属書A.2 | ||||
| 着用した手袋、 指サックシステム |
附属書A.3 | JIS C31640-2-1 (A.2) | |||
| 人体/敷物/システム抵抗 | 附属書A.3 | ||||
| 人体/敷物/床システム抵抗 | JIS C31640-4-5 (6.3) | JIS C31640-4-5 (6.4) | |||
| 工具システム | 附属書B |
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- 保護アイテム製品の認証では、試験の環境条件として、相対湿度を(12±3)%、温度を23℃±3℃とするとよい。
- 電荷発生試験は参考である。