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2023.06.24

【関連知識】ネジの基本とネジの種類・ネジ締めのポイント

ネジ(螺子)は、円筒部品にらせん状の溝を切った、機械要素部品です。
ネジは、部品の締結や固定だけでなく、ネジ機構を利用した搬送や位置決めなど、日常生活からものづくり産業まで、あらゆる分野で重要な役割を担っています。
ネジには、頭の形状や寸法によってさまざまな種類があるため、ネジ締め作業にあたっては、ネジの種類や特徴を知ることが重要です。

ネジとボルトの違いは?

「ネジ」は、円筒部品にらせん状の溝が切られた機械要素の総称で、側面に溝が切られたネジを「雄ネジ」、円筒の内面に溝が切られたネジを「雌ネジ」と呼びます。
部品の組み立てで使われる「六角ボルト」や「ナット」や、精密部品に使われる小さな「ビス」なども、すべて『ネジ』の一種です。
主に、スパナやレンチで締め付ける大きめのネジを「ボルト」、ドライバーで締め付ける十字穴やすりわりネジを「ネジ」と呼びますが、明確な定義はされていません。

ネジの各部の名称

ネジの各部の名称

リセス

ドライバーやレンチを差込む溝を「リセス」と呼びます。
代表的なリセスには、プラスドライバーを差し込む「十字穴」と、マイナスドライバーを差し込む「すりわり」があります。

⼗字穴・すりわりの詳細はこちら
その他のリセスの詳細はこちら

ネジ山(ネジ部)

ネジ山(ネジ部)はらせん状のギザギザ部です。一般的な締め付けに使われるネジ部は「三角ネジ」と呼ばれます。
三角ネジの切り方には、メートルネジやユニファイネジ、タッピングネジ、管用ネジ、小ネジ、カメラネジなど、さまざまな規格があります。
またネジ山には三角ネジ以外にも、プレスやジャッキなどに使われる「角ネジ」や、運動伝達用に使われる「台形ネジ」など、さまざまな種類があります。

ネジ山の代表的な種類はこちら

頭部

ネジの頭部には、ネジを一定以上締め付け過ぎないように固定させる役割があります。
ネジ頭部の形状は「なべ頭」や「皿頭」などが一般的ですが、頭が大きい「トラス」や頭の薄い「低頭ネジ」など、用途によってさまざまな形状があります。

座面

座面は、ネジを締め付けたときの「締付力」を受ける部分になります。

先端部

ネジの先を「先端部」と呼びます。
先端部には締め付ける材料にあわせて、ネジ込みやすくする「とがり先」や、材料を傷つけない「丸先」など、さまざまな形状があります。

ネジの各部の寸法の見方

ネジの各部の寸法の見方

呼び径 呼び径は「雄ネジ」の場合はネジの外径、「雌ネジ」の場合はネジの内径を表します
M2、M3、M4、M5ネジなどと呼ばれますが、「M」はメートルネジであるということを表しています
雄ネジの外径はネジ山の軸の直径で、ネジ頭部の直径ではありません
ピッチ ピッチは、隣り合うネジ山とネジ山の間の距離(間隔)のことです
並目のメートルネジやミニチュアネジなど、呼び径に対しピッチが規定されているネジでは、一般的にピッチを省略します
インチのユニファイネジの場合、1インチ(25.4mm)あたりの山数で表します
ネジ山の角度 ネジ山の頂から谷底へと広がる角度です
メートルネジ、ユニファイネジのネジ山の角度は60°です
雄ネジの外径 雄ネジの山の頂に接する、仮想円の直径です
雄ネジの谷の径 雄ネジの谷底に接する、仮想円の直径です
雌ネジの内径 雌ネジの山の頂に接する、仮想円の直径です
雌ネジの谷の径 雌ネジの谷底に接する、仮想円の直径です
有効径 ネジ溝の幅とネジ山の幅が等しくなるような、仮想円の直径です

代表的なリセス(⼗字穴・すりわり)

ドライバーやレンチを差込む溝(リセス)にはさまざまな形状がありますが、もっとも一般的な形状が、「十字穴」と「すりわり」です。

頭部

頭部
⼗字穴(Cross Recesses for Screws)は、さまざまな製品の取り付けに広く使われているリセスです。
もとは⽶国フィリップス社によって考案されたリセスで、リセスとプラスドライバーの刃先がかみ合いやすく、大量生産でも効率よくネジ締めを行うことができます。

⼗字穴の特徴

  • ビット刃先がテーパー状で、リセスに差し込みやすい
  • マグネットなしでもネジを拾うことができる
  • リセスに⼗分深く嵌合しないため、過度のトルクによって先端が折損しやすい

⼗字穴は、押す力と回す力のバランスや、ネジとドライバーのサイズ不適合によって、カムアウト(ビットがネジの十字穴から浮き上がってしまう現象)が発生しやすい課題があります。
カムアウトはネジをなめてしまう原因となったり、ビットや十字穴をつぶしてしまうこともあり、生産性の低下につながるため、事前に対策を講じることが大切です。

◎関連記事:カムアウトの発生原因とカムアウト防止のヒント

⼗字穴の種類

⼗字穴は、主に「H形」「Z形」「S形」の3種類があります。

H形 もっとも一般的な⼗字穴で、フィリップス※1系と呼ばれます
(類似規格:ISO 4757)
Z形 ポジドライブと呼ばれる⼗字穴で、十字穴の45度ずれた位置に小さな溝があり、トルク伝達力が高くカムアウトを防ぐことができます
ヨーロッパ製のスポーツ用品や組立家具、住宅建材、コンピュータ、OA機器、⾃動⾞などに使われています
またポジドライブのカムアウト作⽤をさらに改善したスパドライブとよばれる形状もあります
スパドライブは開発国の英国では主流になっています
(類似規格:ANSI type1A、ISO 4757 type Z、JIS B4633 Z形)
S形 カメラやめがね、精密機器などに使われる呼び径2mm以下の小ネジです
(準拠:日本写真機工業規格JCIS 8-70)

プラスドライバーは、多少サイズが違っていても回せますが、ネジをなめてしまったり、手元がすべってケガにつながることもあるため、それぞれの規格と呼び径にあったドライバーサイズを選定する必要があります。

◎関連記事:⼗字穴のネジ呼び径とサイズはこちら
◎関連記事:ドライバーのサイズの見方

すりわり

すりわり
すりわり(Slotted head screws)は、ネジ頭に一文字に溝が切られたリセスです。
⼗字穴よりも歴史が古く、ネジ溝に汚れが溜まりにくいため、メンテナンス性が高いことが特徴です。特に時計、眼鏡、精密機器などの⼩ネジに多く使われています。

すりわりの特徴

  • 回転⾓度を管理する調整ビスとして多く使われている
  • ビットがリセスからズレやすく、刃先やネジ表⾯が損傷しやすい
  • ⾃動機組立には適さない

すりわりは、⼗字穴と比べカムアウトを起こしませんが、リセスの端があいているため、マイナスドライバーが外れてしまい、ネジの表⾯や周辺の材料にダメージを与えやすい課題があります。またリセスに刃先をしっかりとおさめることができないため、トルク伝達に限界があります。
マイナスドライバーの長さと刃幅はJIS規格で決まっているため、ネジによく合ったものを選ぶことが大切です。

◎関連記事:すりわりのネジ呼び径とサイズはこちら
◎関連記事:ドライバーのサイズの見方

その他のリセス

ネジのリセスには、⼗字穴・すりわり以外にもさまざまな種類があります。

六⾓⽳付きボルト・⽌めネジ

六⾓⽳付きボルト・⽌めネジ
六⾓⽳付きボルトは、製品の組み立てや、⾦型、機械、精密機器、バイクなど、⽐較的⼤きな締結⼒が必要な箇所に使われるネジです。六角穴付き⽌めネジ(イモネジ)は、機械部品の固定や位置決めに使われます。

六角ボルト

六角ボルト
六⾓ボルトは、機械装置や組み立て、機械整備、⾃動⾞、機械、住宅、建築関連まで、幅広い業界で使われるネジです。⾼い回転⼒で締め付けることができますが、六⾓⽳やビットを痛めやすく、ビットの⾓が徐々に変形してしまい、接触部が丸くなりやすい特徴があります。
刃先が直線になっているためネジが脱落しやすく、ネジを保持する際は、マグネットタイプのレンチが使われます。

トルクスネジ

トルクスネジ
トルクス(TORX®※2)は、アメリカで開発された「六角星型ネジ」です。6つの耳たぶ状曲線で構成されており、一般的なネジや、六角穴付きボルトに比べ駆動効率が高く、確実なトルク伝達とカムアウト防止が実現します。
トルクスは、パソコン・スマートフォンなどの精密機械や、ヨーロッパ製の自動車など、ヨーロッパやアメリカで広く普及しています。また製造現場では、切削工具として使われるバイトの「旋削チップ」の取り付けにも使われています。
トルクスの駆動効率をさらに高めたトルクスプラス(TORX PLUS®※2)や、いたずら防止のタンパープルーフ・トルクスなど、そのバリエーションも豊富です。
(類似規格:JASO F116、JIS B 1015、ヘクサロビュラ/ヘックスローブなど)

◎関連記事:トルクスの用途とトルクスのサイズ・種類

四角ネジ(ロバートソン)

四角ネジ(ロバートソン)
四⾓ネジは、主に筋交い金物の組み付けや、耐震⾦物、サッシ、ログハウスなどの建築関連で使われるネジです。主に⽊ネジとなります。

ラインヘッド

ラインヘッド
ラインヘッド(LHS®※3)、LHスティックス(LH STIX®※3)は、星型リセスが特徴のネジで、確実なトルク伝達とカムアウト防止が実現します。
主にOA機器、携帯電話、⾃動⾞、コンピュータなどに使われています。

トライウイング

トライウイング
トライウイング(Tri-Wing®※4)は三枚⽻根のリセスが特徴のネジです。
主に航空機、特殊⾞両などのいたずら防止目的として使われています。

マイクロスティックス

マイクロスティックス
マイクロスティックス(MICRO STIX®※5)は三枚溝のリセスが特徴のネジです。
主にスマートフォンやポータブルゲーム機、精密機器などの精密部品のいたずら防止目的として使われています。

ネジ山の代表的な種類

日本をはじめ、ネジ山の規格としてもっとも多く使われているのが「メートルネジ」です。一方で、アメリカなどのインチを単位とする国では、「ユニファイネジ」が利用されています。
またネジは通常、右ネジ(軸方向右回りに締め付け)のものが一般的ですが、ネジそのものが回転する力を受けてしまう場合、左回りに締め付ける左ネジ(逆ネジ)が使われることもあります。

メートル並目ネジ

メートル並目ネジ
一般的なネジや、ボルト・ナットで多く使われているネジ山で、ネジ山の角度は60°です。
呼び径に対してピッチが規定されているため、一般的には「M3」や「M5」など、ピッチを省略して表されます。

メートル細目ネジ

メートル細目ネジ
メートル並目ネジよりもピッチが細かいネジ山で、ネジ山の角度は60°です。
一般的には「M8×1」や「M10×1.25」など、呼び径とピッチを合わせて表されます。
並目ネジよりもネジ山が多いため、精密な位置調整を必要とする機械部品や、ネジが短く締め付けがしにくい場合に最適です。

ユニファイ並目ネジ(UNC)

ユニファイ並目ネジ(UNC)
呼び径をインチで表したアメリカの規格で、ネジ山の角度は60°です。
ピッチは1インチ当たりのネジ山数(25.4mmのネジ長さに対していくつ山があるか)で表します。
呼びに対応するナットが使用できるため、大きな保持力が必要な場合や、振動が多い箇所、厚板やふくろ穴での使用に適しています。

ユニファイ細目ネジ(UNF)

ユニファイ細目ネジ(UNF)
ユニファイ並目ネジよりもピッチが細かいネジ山で、ネジ山の角度は60°です。
1インチ当たりのネジ山数がユニファイ並目ネジに比べて多くなっており、精密な位置調整が必要な場合に使われます。

ウィットネジ(W)

ウィットネジ(W)
呼び径をインチで表したイギリスの規格で、ネジ山の角度は55°です。
ピッチは1インチ当たりの山数(25.4mmのネジ長さに対していくつ山があるか)で表します。

タッピングネジ

タッピングネジ
ネジ立てをしながら締め付けることができ、切削性が良好で、亜鉛ダイカスト、鋳物、アルミダイカストなどの締結に多く使われています。
先端のとがり部分は穴のズレを整え、食い付きを助けるガイドの役目をします。

管用ネジ

管用ネジ
高い気密性が求められる、水道管やエア配管などの管の接続に使われるネジです。
先端に行くほど細くなる円すい形の「管用テーパーネジ」と、先端まで太さが変わらない「管用平行ネジ」があります。
管用ネジは、1/8インチ(チブ)、1/4インチ(ニブ)、3/8インチ(サンブ)などのインチで表すのが一般的です。

ネジ締めのポイント1〈強度区分〉

ネジは一種のくさび形状になっており、小さな力(締め付け力)で大きな引っ張り力(軸力)を得ることで、締め付けが行われます。そのため、ネジの締め付けにおいては、大きな引っ張り力に耐えられるネジの「強度」がポイントとなります。

ネジの締め付け原理

ネジを締め付けることで、ネジ部が「ネジ頭」と「ナット」によって引っ張られて伸びる
ネジ部の弾性回復(金属の引っ張られても元に戻ろうとする性質)によって、「ネジ頭」と「ナット」が逆に引っ張られ、被締結物に圧力がかかり締め付けられる

 

ネジの強度を表す「強度区分」の見方

ネジの強度は「強度区分」によって表され、六角ボルトや六角穴付きボルトの場合、その数値がネジ頭に刻印されています。
強度区分の数値は、はじめの数字を「引っ張り強さ」、小数点以下の数字を「耐力・降伏点の比率(%)」で表されます。

ネジの強度を表す「強度区分」の見方

強度区分の見方

鉄製ネジで強度区分「4.6」の場合、引っ張り強さ400N/mm2、耐力・降伏点の比率60%(240N/mm2)となります

 

ネジの強度区分は、ネジの材料と熱処理の有無で決まります。ネジの主な材質には、鉄、ステンレス、真鍮があげられますが、強度区分が上がるにつれて、合金のものや熱処理が施されたものが増えていきます。

〈引っ張り強さの測定方法〉

引っ張り強さの測定方法
引っ張り強さは、試験片(材料)を引っ張り試験機によって引っ張り、その材料が破壊したときの大きさを単位面積当たりで算出し表します。引っ張り強さは、材料の強さを最も端的に表す数値となります。

a点 a点では荷重に比例して伸びも増大していくが、荷重を除くと元の長さに戻ります
(弾性域)
b点 さらに荷重をかけ、b点を過ぎるとわずかな荷重で伸びだけが一時的に進行します
この弾性限界を「降伏点」と呼びます
(b点は、非鉄合金や特殊鋼等の場合は耐力として表されます)
c点 その後荷重と伸びは極大曲線を描き、c点で最大荷重となります
この点を「引っ張り強さ」と呼びます
d点 最大荷重がかかった後は伸びだけが進行し、d点で破断します
b点からd点までの範囲を「塑性域」と呼びます

締結設計の際は、ネジの弾性限界(耐力)を基準に安全率を加味して設計します
締結設計の際は、ネジの弾性限界(耐力)を基準に安全率を加味して設計します。
耐力指数は上記の割合になっており、例えば強度区分「4.6」のネジを約4倍の耐力をもつ「12.9」のネジに代替えする場合は、ネジ径をl/2にするか使用本数をl/4に減らすことがで可能になります。

ネジ締めのポイント2〈締め付けトルク〉

ネジの緩みは、振動による部品の脱落や大きな事故の原因となるため、確実に締め付ける必要があります。しかし必要以上の力で締め付けてしまうと、逆にネジの破損につながるため、適正な力加減が必要とされます。そこでポイントとなるのが、締め付けトルクとトルク管理です。
ネジの締め付けでは、鉄やアルミ・ステンレス、樹脂など、材質によっても力加減が変わるため、用途にあわせた「締め付けトルク」の管理が重要です。

◎関連記事:締め付けトルクとトルク管理
◎関連記事:トルクツールの種類とトレーサビリティ

ネジの代表的な製造方法〈切削ネジと転造ネジ〉

ネジの代表的な製造方法〈切削ネジと転造ネジ〉
ネジには大きく、旋盤などの切削で製造される「切削ネジ」と、型を押し付けて製造する「転造ネジ」があります。
切削ネジは、高い精度が要求される精密なネジの製造や、一品もののネジの加工に向いています。一方、転造ネジは、金属を鍛造してつくるため強度が高く、大量生産に向いています。
それぞれのメリット・デメリットから、用途とコストに合ったネジの製造方法が選択されます。


  • ※1 Phillips®は、⽶国 Phillips Screw Companyの登録商標です
  • ※2 TORX®およびTORX PLUS®は、米国 Acument Intellectual Properties, LLCの登録商標です
  • ※3 LHS®およびLH STIX®は、オーエスジー株式会社およびオーエスジーシステムプロダクツ株式会社の登録商標です
  • ※4 Tri-Wing®は、⽶国 Phillips Screw Companyの登録商標です
  • ※5 MICRO STIX®は、オーエスジーシステムプロダクツ株式会社の登録商標です