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【特集】ベッセルの静電気除去装置への取り組み

樹脂成形から半導体実装まで、今やさまざまな業界のものづくりに欠かすことのできない「静電気除去装置」。イオナイザーをはじめとした静電気対策品は、私たちベッセルの主要製品のひとつですが、その開発の歴史は2000年、当時業界最軽量160gの「ノズル型静電気除去装置」を発売したところからはじまりました。 この記事では、ベッセルの「静電気除去装置」開発の歴史と、その取り組みについてご紹介します。

樹脂成形から半導体実装まで、今やさまざまな業界のものづくりに欠かすことのできない「静電気除去装置」。イオナイザーをはじめとした静電気対策品は、私たちベッセルの主要製品のひとつですが、その開発の歴史は2000年、当時業界最軽量160gの「ノズル型静電気除去装置」を発売したところからはじまりました。

この記事では、ベッセルの「静電気除去装置」開発の歴史と、その取り組みについてご紹介します。

2000年〜 STAT BUSTER シリーズの誕生

ベッセル初の静電気除去装置「STAT BUSTER(スタットバスター)シリーズ」誕生のきっかけは、お客様の課題解決にありました。

当時、フィルム・印刷・樹脂成形における静電気対策は、一部のメーカーの「静電気除去装置」こそ使われていましたが、業界での静電気対策の重要性は、今にくらべて認知されていませんでした。そのようななかご相談をいただいたのが、プラスチックレンズ成形における静電気対策です。

ベッセルのエアニッパーをお使いのお客様から、「エアーニッパーのように、自動機に取り付けできる静電気除去装置はつくれないか?」とのご相談をいただいたのです。

従来プラスチックレンズ成形では、ゲートカット処理をする際、帯電した静電気が空気中のホコリをよせつけ、レンズに再付着してしまうことがありました。そのため水洗浄の工程が増えてしまい、不良品の原因にもなっていたのです。そこで開発に着手したのが、STAT BUSTER シリーズです。

その後自動機に取り付けができる小型の「静電気除去装置」を開発し、イオン洗浄のスタイルを確立。樹脂成形や塗装など、用途にあわせた新製品を打ち出し、静電気除去装置の開発の歴史がはじまりました。

SDJ-02〈2000年〉

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SDJ-02(SDJ=Sei Denki Jyokyo)は、ベッセルがはじめて市場に送り出した静電気除去装置です。小型・軽量を徹底的に追求し、射出成形機のチャック盤に取り付けができる、当時最軽量160gのノズル型静電気除去装置として誕生しました。

このSDJ-02を皮切りに、さまざまな改良製品・応用製品が生まれていくこととなります。

(現在ではピンポイントノズル〈N-3〉として、104gのさらなる軽量化を果たしています)

SDJ-03〈2003年〉

sdj_03SDJ-03では〈SDJ-02〉にワイドノズルを搭載することで、より広範囲の除電・除塵が行えるようになりました。これにより射出成形機だけでなく、樹脂ペレット粉砕時のホッパー内の除電や、ストッカーに溜まった成形品の除電もできるようになり、使用用途もより広くなっていきました。

SDJ-06〈2003年〉

SDJ-06は自動車塗装前の除塵や金型のホコリ付着防止に最適な,ガンタイプの静電気除去装置です.高圧電源を本体ケースに組み込み、強力なエアブローで瞬時に除電・除塵を行うことができました。

人間工学にもとづいたエルゴノミックデザインは、後のG-7・G-9シリーズに受け継がれていくこととなります。

SDJ-05〈2003年〉

sdj_05SDJ-05は無風で静電気が除去できるファン型静電気除去装置です。SDJ-05の登場によってフィルム剥離や接着材など、これまでエアブローできなかった繊細な除電作業も、無風で行うことができるようになりました。

AC電源を使用しているため、キャップを回す(放電針とグランド間の距離を変える)だけでイオンバランスを調整できるなど、当時としても画期的な製品でした。

2005年〜 STAT CLEAN シリーズの登場

STATCLEAN_LOGO

2005年、IT産業のめざましい発展によって新たに登場したのが「STAT CLEAN(スタットクリーン)シリーズ」です。パソコンや電子デバイスなど電子部品業界の生産現場では、デリケートな電子部品の「ESD破壊(静電気破壊)」をいかに防止するかが課題となっていました。静電気除去の目的が、従来の「除塵」だけではなくなっていたのです。

そこでベッセルでは、STAT BUSTER シリーズで培った静電気除去のノウハウをもとに、当時電子部品業界で主流になりつつあったセル生産に適した小型の「静電気除去装置」を開発。IT産業の急成長とともに、そのシェアを一気に拡大しました。

また業界に先駆け、CEマーキング(低電圧指令および電波指令)をいち早く導入し、製品の安全設計技術を高めたことも、シェア拡大の一因となりました。

  • セル生産とは

セル生産は屋台生産方式とも呼ばれ、ひとりまたは少数の作業チームで組み立てから完成・検査を行なう生産方式です。消費者ニーズの多様化にともない、多品種少量生産が増えるなか、セル生産による製造ラインも増加しています。

SDJ-08〈2003年〉

sdj_08SDJ-08はセル生産に最適な小型の静電気除去ミニファンです。業界初のクリップ付きで、セル生産台のパイプに装着することができ、電子デバイスのアッセンブリや各工程での静電気除去に効果を発揮しました。

(クリップ付きの機種は、現在〈F-6RCL〉に品番変更しています)

SDJ-09〈2005年〉

sdj_09SDJ-09は繊細なCMOS素子の静電気破壊を防止するために開発された、高周波圧電トランス式のファン型静電気除去装置です。

より優れたイオンバランスを求め、新発想の容量結合針ユニットを開発。容量結合針は、薄い金属プレートと樹脂プレートを交互に重ねたもので、一種のコンデンサーの役割を持ち、イオンバランス±5Vという高性能を発揮しました。

ベッセルはこのSDJ-09で、より微細化・高密度化する半導体デバイス市場に向けて開発の舵を切りました。

SF-09〈2007年〉

SF9これまでの静電気除去装置には、「生成したイオンが再結合してしまう」「イオンバランスが崩れると、装置自体が静電気を発生してしまう」という2つの課題がありました。その課題を解決したのが、SF-09です。

SF-09はイオンの再結合が少ないDC型静電気除去装置です。業界初の「ディアルピエゾ(2極の放電針)」と「イオンバランス自動補正機能」によって、連続1000時間の使用でもイオンバランス±5V以内という高い性能を発揮しました。しかし「AC神話」が根強く残る半導体業界で受け入れられず、残念ながら廃番になっています。

G-7〈2008年〉

G-7RG-7は生産現場でのスポット除電・除塵に最適な、ガンタイプの静電気除去装置です。高圧エアー使用時でもイオンバランスが崩れない独自のイオン溜まり構造で、イオンを遠くまで確実に届けることができます。

SDJ-06と同じく人間工学にもとづいたエルゴノミックデザインで,グリップを持ち変えることなく効率的な作業を行うことができました.

2008年〜 STAT BUSTER シリーズの復活

STATBUSTER_LOGO

2008年、ガンタイプの静電気除去装置〈G-7〉の発売とともに、すべての「STAT BUSTER シリーズ」を「STAT CLEAN シリーズ」へと移行。電子・電気・光学・FPD関連業界に向けた静電気対策品として、さらにACパルスバー、導電性マット、イオンパーツクリーナー、スーパースリムノズルなどのアイテムを拡充してきました。

しかしそのようななか STAT CLEAN シリーズでは補えない「帯電量の多いワーク」を除電したいというニーズが、新たに寄せられました。そこでGP-1をはじめとした「STAT BUSTER シリーズ」を復活。ハイパワーの静電気除去装置シリーズとして再構築することとなったのです。

STAT BUSTER シリーズは現在では、印刷・包装・樹脂成形など、除電パワーを必要とする工程での静電気対策に使用されています。

 

2018年〜 発電式イオナイザーの登場

g9これまでガンタイプの静電気除去装置は、激しい取り回しにより、電源ケーブルの断線が多く発生していました。特に自動車塗装では、バンパーやドアパネルなど広い面の除電・除塵を行うため、電源ケーブルの強度アップが求められていたのです。そこで新たに開発されたのが、電源ケーブル不要の発電ガン〈G-9〉です。

G-9はコンプレッサーから供給したエアーをグリップ内で分岐し、エアータービンを回転させイオン生成の電力を発電。 ACアダプターや高圧ケーブルが必要なく、エアー配管のみで作動できるのが大きな特長です。

また充電式や電池式にくらべ、充電の手間や落下による破損の恐れがありません。

自動車塗装だけでなく、自動車製造や家電組み立てなど、大きなワークのイオン洗浄で、幅広く使用されています。

 

お客様の課題を解決する製品開発

ベッセルの静電気除去装置は、小型のクリップ式からハイパワータイプまで、フルラインナップを取り揃えています。これまで他社にはないオリジナリティの高い製品開発で、さまざまな静電気除去装置を市場に送り出してきましたが、その原動力は「お客様の課題解決」です。お客様の目の前の課題を解決し、市場のニーズに応えることが、ベッセルの製品開発の使命であると考えています。