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2026.08.08
【基礎知識】なめたネジの原因と、損傷レベル別の外し方・工具の選び方
目次
ドライバーで回した瞬間の「グニャッ」という嫌な感触。ネジ頭の溝が潰れ、工具が空回りしてしまう状態を、現場では「ネジがなめた」と言います。たった1本のなめたネジによって、分解や修理、生産設備のメンテナンスが止まってしまうことも珍しくありません。
なめたネジを外すときに大切なのは、慌てて力任せに回さないことです。ネジの状態を見極め、損傷の少ない方法から順番に試すことで、取り外せる可能性を高められます。
なぜネジは潰れる(なめる)のか?5つの原因

対処方法を選ぶ前に、ネジがなめる原因を確認しましょう。原因を理解しておくと、取り外す際の二次損傷を防ぎやすくなり、次にネジを締めるときの予防にもつながります。
- [原因1]カムアウト(押し付け不足)
- [原因2]サイズ・規格の不適合
- [原因3]斜め差し
- [原因4]摩耗した刃先・工具の精度
- [原因5]電動工具の高速回転・オーバートルク
原因1:カムアウト(押し付け不足)

十字穴付きネジに回転力を加えると、ドライバーの刃先が斜めの溝に沿って浮き上がろうとします。この現象を「カムアウト」と呼びます。
ドライバーは、ネジに対して垂直に当て、「押し7:回し3」の力加減で回すのが基本です。押し付ける力が不足すると刃先が浮き、十字穴の縁を削ってしまいます。
ネジがなめる原因として、特に多いのがカムアウトです。
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原因2:サイズ・規格の不適合
プラスドライバーには、1番、2番、3番などのサイズがあります。ネジの十字穴とドライバーのサイズが合っていないと、刃先と溝の接触面が少なくなり、一部分に力が集中します。
見た目が同じプラス形状でも、サイズが合わなければネジを傷めます。「プラスドライバーなら何でも回せる」と考えず、ネジに合ったサイズを選ぶことが重要です。
原因3:斜め差し
ドライバーがネジに対して傾いていると、刃先の一部にしか力が伝わりません。回すたびに溝の片側が削られ、徐々に工具が掛からなくなります。
奥まった箇所や狭い場所、無理な姿勢での作業では、ドライバーが斜めになりやすいため注意が必要です。
原因4:摩耗した刃先・工具の精度
先端が摩耗、変形したドライバーやビットは、ネジの溝に十分に入りません。新品と同じ力で回しても食い付きが浅く、カムアウトが起きやすくなります。
ネジを傷める前に、工具側の摩耗や欠けも点検してください。ドライバービットは消耗品です。先端が丸くなったものは早めに交換しましょう。
原因5:電動工具の高速回転・オーバートルク
電動ドライバーやインパクトドライバーを高速回転させたままネジを締めると、着座した瞬間に大きな力が掛かります。カムアウトや締め過ぎが一瞬で起こり、手回しよりも深く溝を削ることがあります。
サビやネジロック剤で固着したネジを、電動工具で無理に回し続けることもネジ頭の破損につながります。
ネジをなめる原因は、工具の使い方だけとは限りません。製品や設備の構造によってドライバーを垂直に差し込めない場合、正しい工具を使っても斜めに力が掛かります。
設計や施工の段階では、ドライバーや電動工具をまっすぐ入れられる工具スペースを確保することも重要です。保守・点検時の作業姿勢まで考慮することで、ネジの損傷や整備時間の増加を防ぎやすくなります。
作業前に確認!ネジの「損傷レベル」診断
なめたネジを外すときに避けたいのが、効かない方法を力任せに繰り返し、残っている溝まで完全に削り取ってしまうことです。
損傷が進むほど使用できる方法は減り、母材やネジ穴を傷めるリスクも高くなります。作業を始める前に、次の3点を確認してください。
| 溝の残り具合 | ドライバーが掛かる部分が残っているか、ほぼ丸く削れているか |
| ネジ頭の形状 | 頭が出ているなべネジ・トラスネジか、部材に沈み込んだ皿ネジか |
| ネジの材質・種類 | 鉄の小ネジか、ステンレスネジか、ドリルネジ・コーススレッドなどの高硬度ネジか |
〈損傷レベル〉
| 損傷レベル | ネジの状態 | 主な対処・工具 |
| レベル1(軽度) | 溝が変形しているが、まだ刃先が掛かる | 摩擦を増やす/固着を緩める/貫通ドライバー・ショックドライバー |
| レベル2(中度) | 溝が潰れ、通常のドライバーが掛からない | ハズセルで新しい引っ掛かりを作る/頭をプライヤーでつかむ |
| レベル3(重度) | 溝が完全に消失した/皿ネジで頭をつかめない | ネジはずしビットで穴をあけて抜き取る |
| レベル4(最終) | ネジが折れた/抽出工具でも外れないす | ネジ頭やネジ本体の除去/ネジ穴の修正 |
損傷レベル別の外し方と工具の選び方

なめたネジを外す鉄則は、「ネジや母材への損傷が少ない方法から順番に試すこと」です。
穴あけなどの加工を先に行うと、それまで使えた方法が使えなくなります。ネジ溝の状態を確認し、レベル1から順に方法を切り替えてください。
- [レベル1]摩擦を増やし、固着を緩めて回す
- [レベル2]新しい引っ掛かりを作る/頭をつかむ
- [レベル3]ネジはずしビットで穴をあけて抜き取る
- [レベル4]ネジ頭やネジ本体を除去する
レベル1:摩擦を増やし、固着を緩めて回す
ドライバーが掛かる溝が残っているうちは、まずネジ頭を削らない方法から試します。
正しいサイズと姿勢で回す
ネジに合ったサイズのドライバーを選び、ネジに対して垂直に差し込みます。「押し7:回し3」を意識し、強く押し付けながらゆっくり回してください。
軽度のなめであれば、工具と姿勢を見直すだけで外れることがあります。
輪ゴムやすべり止め液で摩擦を増やす
ネジ溝とドライバーの間に、厚手で幅の広い輪ゴムを挟む方法があります。ゴムが隙間を埋め、刃先の滑りを抑えます。
市販のネジすべり止め液を1〜2滴垂らす方法も有効です。液に含まれる微粒子が接触面の摩擦を高め、ドライバーの食い付きを補助します。
輪ゴムが薄いと、ちぎれたり刃先が滑ったりするため、無理に力を掛けないでください。
浸透潤滑剤でサビや固着を緩める
サビが疑われる場合は、浸透潤滑剤を塗布し、内部まで浸透する時間を置いてから作業します。
ネジロック剤が使われている場合は、製品や周囲の材質を確認したうえで、加熱によって樹脂を軟化させられることもあります。樹脂部品、塗装面、電気配線の近くでは加熱しないでください。
固着した状態のまま無理に回すと、ネジ頭だけでなくネジ本体が折れるおそれがあります。
貫通ドライバーで固着を緩める
貫通ドライバーは、軸がグリップの後端まで通っており、尻をハンマーで叩ける構造です。
打撃の衝撃をネジまで伝え、サビやネジロック剤による固着を緩めます。打撃後は、ネジにドライバーを強く押し付けながら手で回します。
ショックドライバーで緩め方向の回転を加える
ショックドライバーは、ハンマーで叩いた力を、瞬間的な緩め方向の回転と押し付け力に変換する工具です。
打撃によって刃先がネジに押し付けられるため、カムアウトを抑えながら大きな回転力を伝えられます。貫通ドライバーで回らない固着ネジや、なめ始めているものの溝が残っているネジに向いています。
ベッセルの「メガドラ インパクタ」は、通常のドライバーとして使える貫通構造と、打撃を緩め方向の回転に変える機構を備えています。貫通ドライバーとショックドライバーの両方の使い方ができる工具です。
(使用するには刃先が掛かる溝が残っている必要があります)
レベル2:頭をつかむ/新しい引っ掛かりを作る
ネジ溝が潰れ、通常のドライバーが掛からなくなった場合は、別の方法に切り替えます。
ネジ頭をプライヤーでつかむ
頭が部材から出ているなべネジやトラスネジであれば、ネジつかみ用プライヤーで頭を直接つかんで回す方法があります。
専用品は、一般的なペンチとは異なり、ネジ頭に食い込む縦方向の溝などを備えています。
ただし、部材に沈み込んだ皿ネジや、狭い隙間、奥まった場所にあるネジには使用できません。ネジ頭を強くつかむため、周囲の部材や塗装面を傷付けることもあります。外観が重要な製品では、工具を当てる位置や養生に注意してください。
新しい引っ掛かりを作る
ネジ頭を外側からつかめない場合は、潰れた十字穴や六角穴に専用の刃先を叩き込み、穴の内側に食い込ませて回す方法があります。
通常のドライバーが掛からなくなったネジでも、新たな引っ掛かりを作ることで回転力を伝えられます。
ベッセルの「ハズセル」は、潰れたネジ穴に専用刃先を叩き込み、新しい引っ掛かりを作る工具です。くさび形状とギザギザの羽根を持つ刃先が、潰れた十字穴や六角穴の壁面に食い込み、工具の回転力をネジに伝えます。
ネジ頭を外側からつかめない皿ネジや、サビによって溝が崩れたネジにも使用できます。
レベル3:ネジはずしビットで穴をあけて抜き取る
ネジ溝が完全に潰れ、ハズセルの刃先も掛からない場合は、ネジはずしビットを使用します。
ネジ頭の中心にドリルで穴をあけ、左ネジ形状のビットを食い込ませます。ビットが食い込む方向とネジが緩む方向が同じため、そのまま回すとネジが抜けます。
レベル4:ネジ頭やネジ本体を除去する
ネジはずしビットでも外れない場合は、ドリルでネジ頭を削り取って部材を分離する方法や、ネジ本体を除去してタップでネジ穴を修正する方法があります。
作業に失敗すると、母材側のネジ穴まで傷めるおそれがあります。重要な設備、精密機器、交換できない部品では、無理に加工せず、機器メーカーや専門業者へ相談してください。
ハズセルの使い方

〈選び方〉
| グリップ | ネジの状態や作業場所 |
| ボールインパクタグリップ | 打撃と回転を利用して外すタイプ。 固着が強いネジや、周囲が丈夫な箇所に向いています |
| ボールグリップ/貫通グリップ | 刃先を食い込ませた後、手でゆっくり回すタイプ サビてもろくなったネジや、変形を抑えたい箇所に向いています |
〈使い方〉
- ネジの十字穴または六角穴に、対応するビットを差し込みます。
- ハンマーでビットを慎重に叩き、刃先をネジ穴に食い込ませます。
- 刃先が食い込んだことを確認し、グリップまたは対応する電動工具で、緩む感触を確かめながら低速で回します。
- 外したネジからビットが抜けにくい場合は、ネジをペンチなどでつかみ、ビットを上下左右に動かしながら取り外します。
ネジはずしビットの使い方

〈選び方〉
| タイプ | 構成 | 主な対応 |
| NEJ-1/2/3 | 1本で穴あけから抜き取りまで行う | M3〜M8の鉄小ネジ サイズはOリングの色で識別 |
| NEJ-4/5(スリム) | ドリルビットとネジビットの2本組 | M3〜M6 ステンレスネジに対応し、奥まった箇所にも使いやすい |
〈使い方〉
⚫︎NEJ-1/2/3
穴あけとネジの抜き取りを左回転で行います。途中で電動工具の回転方向を切り替える必要がなく、手順を間違えにくい設計です。
- ネジ径に合ったサイズを選び、電動ドライバーに装着します。
- 電動ドライバーを左回転(緩め方向)に設定します。
- ネジ頭の中心にビットを垂直に当て、低速で穴をあけます。
- 左回転を続けると、逆ネジ部分が穴に食い込み、ネジが緩んで抜けます。
(穴あけと抜き取りは、どちらも左回転で行います)
- 詳しい使い方
- つぶれたネジが簡単にはずせる!!(PDF)
⚫︎NEJ-4/5
付属のドリルビットで下穴をあけた後、ネジビットに交換して抜き取る2段階の構成です。チタンコートを施したコバルトハイス鋼ドリルを採用しており、ステンレスネジにも対応します。
- 詳しい使い方
- ネジ頭がつぶれた…そんなときに!!(PDF)
ネジをなめさせない予防のポイント
ネジはずし工具の出番を減らすことが、作業時間と修復費用を抑える近道です。
ネジに合ったサイズ・規格を選ぶ
プラスドライバーは1番、2番、3番などをネジに合わせて使い分けます。刃先を差し込んだときにガタつきが大きい場合は、サイズが合っていない可能性があります。
「押し7:回し3」で垂直に回す

回転力だけでネジを回そうとすると、カムアウトが起こりやすくなります。ネジに対して垂直に工具を当て、押し付ける力を優先してください。
摩耗した工具を交換する
ドライバーやビットの先端が丸くなった、欠けた、ねじれた場合は交換します。摩耗した工具を使い続けると、正常なネジまで傷めます。
電動工具の回転数とトルクを管理する
小径ネジや樹脂部品では、クラッチ付きのドリルドライバーが適しています。着座前に回転数を落とし、必要以上の力で締め付けないようにします。
サビや固着を防ぐ
屋外、水回り、高湿度の環境では、ネジのサビや固着が起こりやすくなります。定期的に点検し、必要に応じて防錆処理やネジの交換を行ってください。
工具をまっすぐ入れられる構造にする
設計や組み立ての段階では、工具をネジに対して垂直に差し込めるスペースを確保します。
ネジの近くに壁や部品があると、工具を斜めに差し込むことになり、カムアウトや片側だけの摩耗につながります。保守作業や将来の分解まで考えた配置が重要です。
よくあるお問い合わせ
- 貫通ドライバーとショックドライバーは、どう違いますか?
-
貫通ドライバーは、打撃の衝撃によって固着を緩める工具です。ネジを回す力は手で加えます。
ショックドライバーは、ハンマーの打撃を瞬間的な緩め方向の回転と押し付け力に変換します。手で回せない固着ネジや、なめ始めたネジに使用します。
メガドラ インパクタは、貫通ドライバーとショックドライバーの両方の使い方ができます。いずれも、刃先が掛かる溝が残っていることが前提です。
- ハズセルとネジはずしビットは、どちらを選べばよいですか?
-
潰れたネジ穴にハズセルの刃先を叩き込める場合は、先にハズセルを使用します。
ネジ穴が完全に消失している、ハズセルの刃先が掛からない、相手側が木材・樹脂の場合や、ネジ部が固定されておらず不安定な場合は、ネジはずしビットを検討します。
- 電動インパクトドライバーで使えますか?
-
ハズセルは、対応する製品と使用方法を確認したうえで、電動インパクトドライバーでも使用できます。高速で一気に回さず、低速で緩む感触を確かめながら作業してください。
ネジはずしビットは、打撃、衝撃、振動によって破損するおそれがあります。インパクト機能を使用せず、ドリルドライバーで作業してください。
- ビットが折れてネジ穴に残ってしまいました
-
折れたビットは硬度が高く、一般的なドリルでは除去しにくいことがあります。
無理に追加加工を行うと、母材やネジ穴まで傷めるおそれがあります。重要な部品では、専門業者や機器メーカーへ相談してください。
ビットの折損を防ぐため、低速、垂直、適切なサイズを守り、無理に力を加えないことが重要です。
- 六角穴付きボルトの穴が丸くなってしまいました
-
ハズセルの六角穴用刃先を使用できます。
専用刃先を叩き込むことで、丸くなった六角穴の内側に羽根が食い込み、回転力を伝えます。
ただし、高硬度ボルトや製品の適用範囲を超えるネジには使用できません。使用前にネジの材質と硬さを確認してください。
ベッセルは1916年の創業以来、ドライバーをはじめとする締結工具を開発してきました。ネジをなめにくくするドライバーやビットから、万一の際に使用するネジはずし工具まで、ネジに関するさまざまなご相談に対応しています。


ネジ頭が部材から出ていれば、プライヤーで外側からつかむ方法が使えます。一方、皿ネジや奥まった場所にあるネジは外側からつかめないため、ネジ穴に工具を食い込ませる方法が必要です。